2014年10月31日金曜日

NHKスペシャル −東京の100年を体感して−

皆様、こんにちは。
10月も今日で終わりですね。
今年も残すところ2ヶ月....「光陰矢の如し」とは正にこの感覚!!
2014年、残りの月日が皆様にとって実り多きものになりますように☆


さて、今回は10月19日(日)21:00-22:13(NHK総合)に放映された
NHKスペシャル『カラーでよみがる東京〜不死鳥都市の100年〜』についてのコラムです。(HPはコチラ)

この番組は、カラー化された東京の貴重な映像を通して、栄枯盛衰を繰り返す
まさに“
不死鳥(phoenix)”のような都市の激動の歴史を体感できるものでした。
カラー化に関しては、NHKが東京を撮影した白黒フィルムを世界中から収集、
フランスCC&C社と協力し、現実にできるだけ近い色彩の復元に挑んでいます。

今年、開業100周年を迎える東京駅
(2012年10月、復元工事完了時に撮影:by aki)

東京のカラー化された映像を拝見し、
モノクロ映像とは異なった感慨がこみ上げてきました。

個人的にはモノクロの映像には特有の味があり、
また当時の技術の痕跡が感じられるのでとても気に入っています。
ですが今回は、カラー化映像の効力に圧倒されました。
モノクロ映像よりも、カラー化された映像での方がより過去の歴史が
身近なものとして迫ってきたのです。

今回、ほんの少し学術協力させて頂きました宝塚の舞台映像のカラー化に関して言えば、
当時の宝塚の観客の方々の高揚感にシンクロするような心地がしました。

こうしたカラーの映像を通して、破壊と再生を繰り返す「諸行無常」ともいえる東京、
そしてそこに生きる人々の姿を目の当たりにし、号泣せずにはいられませんでした。

それは番組によって「過去を傍観した」のではなく、
「自分たちのルーツを体感できた」からだと思います。

時代がどんなに変わろうとも、東京人ないし日本人の持つ不屈の精神、喜怒哀楽、
美徳というものは時空を超えて共通していると感じられたのです。

東京駅丸の内駅舎内のドーム
100年前に開業した東京の玄関口
(撮影:aki)

都市の歴史は、紛れもなく私たち人類の歴史です。
繁栄を享受している中でも、震災や戦争を乗り越え、一つの時代の終焉を迎える時でも、
確実に過去から現在へ、そして現在から未来へと、私たちの精神は受け継がれ、
新たな時代を創造しています。

番組の言葉にありましたとおり、
今日はあの日につながり、あの日も今日につながっている」(※1)のです。
つまり、私たちは懸命に今を生き、そして未来を築いていく責任があると言えます。
番組を拝見したことで、その真理を改めて実感することができました。


こんなにも深く心に響く素晴らしい番組に出会えましたこと、幸せに思います。
僭越ながら、番組にほんの少しでも学術協力させて頂きましたのは「光栄」の一言に
突きます。
番組の制作に携わられたNHKおよび関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
本当に素晴らしい番組をありがとうございました。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
感謝をこめて☆☆

Aki Ishizaka


(※1)
番組で流れた作家・杉本苑子さんの言葉、番組のHPのmessageの箇所を引用致しました。(http://www.nhk.or.jp/special/phoenix/)

2014年10月30日木曜日

雪組公演『伯爵令嬢』−幸福感に包まれて−

皆様、こんにちは。
今回は遅ればせながら10月15日(火)ソワレに日生劇場にて観劇した
宝塚歌劇雪組公演ル・ミュージカル・ア・ラ・ベル・エポック
『伯爵令嬢 −ジュ・テーム、きみを愛さずにはいられない−』についてのコラムです☆

(チラシのスキャン: aki)

この舞台は雪組新トップスター早霧せいな(さぎり・せいな)さん、咲妃みゆ(さきひ・みゆ)さんの
御披露目公演でもありました。
(公式HPはコチラ/宝塚ジャーナルHPはコチラ

原作は“細川智栄子あんど芙〜みん”さんによる少女漫画「伯爵令嬢」(秋田書房刊)、
脚本・演出は生田大和先生によるものです。

物語の簡単な解説&見所は以下の通りです。


【解説&見所】
「エッフェル塔、パリ万国博覧会などに代表されるベル・ エポック(良き時代)と称された19世紀末のフランスが舞台。 真実の報道を使命とし、新聞王として名をはせる公爵家の子息アラン、孤児院育ちだが実は伯爵家の令嬢であり、パリへ向かう途中の海難事故で記憶喪失となった少女コリンヌアランの新聞によって不正を暴かれた父が自ら命を絶ったことでアランに復讐を企むフランソワ、かつてコリンヌと愛を誓い合った盲目の青年リシャール、狡猾な女スリのアンナなど、個性豊かな登場人物たちが織り成す愛の讃歌。(※1)」
2008年パリにて(撮影&加工:aki )

「物語の見所は、記憶喪失になったコリンヌにアランが婚約者だと偽りを告げ、自分の屋敷へと連れて帰り、一緒に暮らし始める中で愛が生まれ、育まれていく過程。そして、コリンヌが記憶を取り戻し、真実を知ったとき、アランが嘘をついたことにショックを受けながらも、彼の愛を改めて受け入れていく点。また、主人公二人の関係性のみならず、愛と哀しみに満ちた各々の親子関係、そして二人を取り巻く登場人物それぞれの生き様の描写です☆ (by aki)」

宝塚版『伯爵令嬢』はロマンティックなハッピーエンドの作品で、
まさに新トップコンビの御披露目、そして宝塚にぴったりの演目でした。

アールー・ヌーヴォーを代表するミュシャの絵を彷彿させる色合いの装置をはじめ、
19世紀末のパリにワープしたかのように感じさせる華やかでお洒落な舞台空間は
とても見応えがあり、音楽やダンスも印象に残る素敵な演出で終始夢心地でした。

そして何よりも、個人的には宝塚が描く「幸福感」や「ハッピーエンド」が
どれだけ尊く、人の心を浄化する力があるのかを改めて痛感した忘れられない舞台と
なりました。

村野藤吾氏設計による日生劇場の観客席の天井。(撮影:aki)
幻想的な雰囲気で、個人的にはバルセロナのアールー・ヌーヴォー建築を思い出します。
『伯爵令嬢』の世界観にも調和する空間です。(劇場についてはコチラ)

前回のコラムに書かせて頂きました通り(詳しくはコチラ)
重みのある不条理演劇『炎』を鑑賞した翌日に、
その真逆とも言える甘いハッピーエンドの『伯爵令嬢』を観劇するにあたり
心が作風のギャップについていけるだろうか、また宝塚に何か抵抗を感じてしまわない
だろうかと、少なからず不安を抱いていました。
ですが、それは杞憂に終わりました。

宝塚特有の華やかなで夢のような世界観に無条件に心が浮き立ったのをはじめ、
咲妃さんが演じられたコリンヌの愛くるしさに「可愛い!」という感情を通り越し、
心が充足されるような温かさを感じ、コリンヌを愛し、己の仕事に使命感を持って
一つの時代を生きる早霧さん演じられるアランの姿には胸が熱くなりました。

こうした舞台から溢れんばかりに放たれる「愛」や「幸福感」といった
エネルギーによって強張った心が解凍されていくような感覚をおぼえ、
気づくと涙が止まらなくなっていました。

早霧さん演じるアランと咲妃さん演じるコリンヌ
(ポストカード(私物)のスキャン:aki)


甘く軽やかな夢のような宝塚版『伯爵令嬢』の世界がこれほどまでに胸を打つのは、
ただ単純に「ハッピーエンド」を迎えているのではなく、そこに至るまでに
登場人物たち各々の苦悩や葛藤が描かれいる点にあると思います。
つまり、この作品における「幸福感」には人間が当然併せ持つ哀しみや苦しみといった「陰」の部分が内包されています。

登場人物たちはこうした哀しみや苦しみから目を背けず、それらを受けとめた上で、
「幸せな結末」へと至っているため、その「幸福感」には深みがあり、
万人の心に響くものとなっているように感じられます。
こうした“カタルシス”とも言える「幸福感」は『伯爵令嬢』に限らず、
宝塚の作品に多くみられます。

日生劇場前にて。後ろには東京宝塚劇場の看板が☆
(撮影:aki)

『炎』のように、重厚な作風を通して、人々に何かを訴えかけていく事が
演劇の持つ一つの役割であると言えます。
ですが同時に、宝塚のように人の心にそっと寄り添い、光を照らし、
浄化させていく事も演劇の持つ力ないし役割の一つであると感じずにはいられません。

今回は真逆の作風の『炎』を観劇した直後でしたので、こうした宝塚の舞台の持つ
カタルシスの効能、ハッピーエンドの尊さがいつもより強く感じられました。

そして、こうした幸福感を体現していらした早霧さんと咲妃さんをはじめとする
雪組の皆様には心からの拍手を送らせて頂きたいです。
芝居心・団結力のある組だからこそ、ハッピーエンドの物語が虚構ではなく、
リアリティを帯びた心に響く舞台となっていたのだと感じます。
改めてタカラジェンヌの皆様の持つエネルギーや実力に感服してしまいました。

これからの新生雪組の動向から益々目が離せません!!!
次回の雪組の舞台は2015年1月〜3月の大劇場御披露目公演です。
こちらもお見逃しなく!!(詳しくはコチラ)

日生劇場にて次回作のご案内!
(撮影:aki)


最後までお読み頂き、ありがとうございました☆
感謝をこめて☆☆

Aki Ishizaka



(※1)
物語の解説箇所は宝塚歌劇のHPを参照致しました。
(http://kageki.hankyu.co.jp/revue/401/index.shtml)

2014年10月19日日曜日

『炎 アンサンディ』を観て...

皆様、こんにちは。
今回は、感動を通り越して「衝撃」を受けた舞台についてのコラムです。

10月14日(火)のソワレに世田谷シアタートラムにて
『炎 アンサンディ』という舞台を観劇しました。
レバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワド氏原作、翻訳:藤井慎太郎氏、
上村聡史氏演出、麻実れいさん主演の作品です。

題名の「アンサンディ(incendies)」とはフランス語で、
火災や火事といった災いを意味するニュアンスが込められています。

レバノン内戦を生き抜き、カナダへ亡命した母親のルーツを双子の姉弟が
解き明かしていく物語です。
舞台は“現代のモントリオール ”、“過去のモントリオール”、“現在の中東”、
“過去の中東”と、四つの時間軸が交錯し、展開されていきました。
詳しいストーリーは以下の通りです。

シアタートラムにて撮影。筆者も写ってしまっております。
幽霊ではございません。悪しからず(笑)
(HP→
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/09/post_370.html)

【ストーリー 】
「現代のモントリオール。公証人エルミル・ルベルは、生前に親交のあった中東系カナダ人女性ナワルの遺言と二通の手紙を彼女の実の子である双子の姉弟ジャンヌとシモンに託す。その二通の手紙にはそれぞれ宛名が書かれており、姉には死んだと聞かされていた父を、弟には存在すら知らされていなかった兄を探し出して、その手紙を渡して欲しいという衝撃的な遺言が告げられていた。そして、その目標が達成された時、更にもう一通の手紙が双子に渡されるというものであった。
 ある日を境に突然話すことを止め、実の子にも心を閉ざして生きてきた母への複雑な思いから、双子は反抗的な態度をとる。だが、公証人のルベルにも促され、母親のルーツを訪ねてみたいという思いが徐々に芽生え始めた双子は、母親の祖国・中東へ旅立つ決心をする。初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命に対峙することになる。(※1)


母親の沈黙、遺言書の意図、父と兄の姿、そうした全ての謎が解き明かされた瞬間、
今まで感じた事のない大きな衝撃が走りました。

演出のクオリティの高さ、役者の方々の迫真の演技に対する感動を通り越して、
絶望、悲しみ、怒り、やるせなさ、そういった様々な感情が一気に押し寄せ、
私自身が主人公と同じく沈黙してしまいたくなるような感覚に陥ってしまったのです。
(※無論、演出をはじめ役者の方々が作品の本質を体現していらしたので、
そのように感じたのです。)

話のネタバレにもなってしまいますが、舞台のちらしの裏面や多くの新聞評にも
書かれています通り、この戯曲はギリシャ悲劇の『オイディプス王』(※2)
彷彿させる作品でもあります。

ですが、ギリシャ神話である『オイディプス王』は自分とはかけ離れた物語として
感じられるのに対し、この『炎』は現代、中東の内乱が背景となっていること、
そして原作者であるムワワド氏自身がベイルートで内戦を経験し、
カナダへ亡命を果たしていることも相まり、
私たちの身近で起こりうる切実な問題として迫ってきたのです。

国の混乱が引き起こした家族の悲劇。
正直タブーとも言える事実に直面した際、もはや沈黙するしか道はないように
感じてしまいます。
ですが、この作品の深みは絶望を伴いながらも事実を受け止め、
愛をもって生きていくことを指し示している点にありました。


シアタートラムの入り口
(撮影:aki)

とはいっても、終演後は感情の整理がつきませんでした。
ブログを書いている今でも、複雑な思いが先走ってしまいます。

ですが、ただ一つ言えるのは、この作品に出会えて良かったということです。
私自身は無力であり、問題に対して具体的に何かできるわけではありませんが、
僭越ながら「観劇を通して感情が大きく揺らいだ」という事実が
意味のあることだと思うのです。

他者の問題をリアリティをもって相手に感じさせること、
それが演劇の持つ力ないし役割であることを今回の観劇を通して
改めて気づかされました。

そして、この話には個人的に続きがあります。(あくまで個人的に☆)
『炎』を観劇した翌日、宝塚歌劇雪組公演『伯爵令嬢』を見に行きました。
正直『炎』の観劇直後に、真逆ともいえるハッピーエンドの作品をみてしまったら
宝塚に何か抵抗を感じてしまうのではないかと心配してしまいましたが、
それは杞憂に終わりました。

真逆の作風の舞台を立て続けに観劇したことで、何を感じたのか?
次回の観劇コラムで綴らせて頂きたいと思います☆☆


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
感謝をこめて☆☆


Aki ishizaka


(※1)
ストーリーの記述は、『炎』のちらしの裏面および当日配布された解説文を参照致しました。
(※2)
『オイディプス王』
ギリシャ神話の登場人物。宿命により、知らずして父王を殺害し、生母を妻としたが、
事の真相を知り、自ら両目をえぐり取り、諸国を放浪して死去。

ギリシャ三大悲劇詩人の一人、ソポクレスによって戯曲化された。


2014年10月13日月曜日

NHKスペシャルのお知らせ

皆様、こんにちは。
この度、番組の宣伝をさせて頂きます。

2014年10月19日(日)21:00~22:15 (総合)
NHKスペシャル「カラーでよみがえる東京〜不死鳥都市の100年〜」
(http://www.nhk.or.jp/special/phoenix/)

東京の激動の歴史を物語る貴重な映像がカラーでよみがえります。
映像を通して、首都である東京の記憶を体感できる番組です。

番組のCMはコチラ
※You Tubeでのリンクが切れてしまっていたので、NHKのFBのリンクを
貼らせて頂いております。(2014年10月31日)


栄枯盛衰を繰り返し、現在の東京が形成されています。
そして都市の歴史は、紛れもなく私たち人類の歴史です。
当たり前の事ですが、考えるととても感慨深いと思います。

秋の夜長に「時空を超える旅」はいかがですか?
ぜひ御覧下さいませ。

そして僭越ながら、昨年私自身が参加していた研究プロジェクト
「早稲田大学演劇映像学連携拠点共立女子大学千代田学事業」
ほんの少しだけ(本当に微々たるものですが)学術協力させて頂きました。

協力させて頂きましたのは、1936年に東京宝塚劇場にて上演された
白井鐵造の演出作品:レビュー『ラ・ロマンス』の映像についてです(※1)
宝塚の歴史であると同時に、帝都東京の華やかなモダン文化を彩った映像としても
お楽しみ下さい。


最後までお読み頂き、ありがとうございました!
感謝をこめて。

Aki Ishizaka



※簡単な解説
①白井鐵造(1900-1983)
「レビューの王様」と称された宝塚歌劇の演出家兼振付家。
代表作に『パリゼット』(1930年)、『花詩集』(1934年)、『虞美人』(1951年)。
現在でも宝塚で歌い継がれている「すみれの花咲く頃」は白井がレビュー『パリゼット』を通して宝塚に紹介した楽曲。
(「すみれの花咲く頃」の原曲はウィーンの作曲家フランツ・デーレによる「ニワトコの白い花が咲く頃」。)

②レビュー(revue)
19世紀のフランスで発祥した演芸の一つ。 
歌やダンスを中心に、寸劇などの各寄席芸種目を組み合わせ、テンポ良く場面を展開させていく舞台形式の事を指す 。 
基本的に一貫した筋書きはなく、場面ごとの独立性や視覚的効果を重視している事が特色として挙げられる。 
だが、時代や国によって特色は異なるため、その定義は流動的且つ曖昧である。
(※ちなみに『ラ・ロマンス』は筋のあるレビューです。ほとんどミュージカルに近いものです。)
パリでは主にフォリーベルジェール(Folies Bergère )、ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge)などの
ミュージックホールでの上演が人気を博し、しばらくしてロンドンで流行、そして次にニューヨークへ輸入された。
日本での最初のレビュー上演は、宝塚少女歌劇(現:宝塚歌劇)による岸田辰彌演出の『モン・パリ』(1927年)と言われている。